自己破産手続をとった場合の個人生活への影響

自己破産をとった場合にどうなるかの説明をしましたが、これを角度を変えて説明していきます。

(1)住まい

賃貸マンションやアパートなどの賃貸物件に住んでいる場合は、家賃の支払さえできればそのまま住み続けても何の問題もありません。
理屈上では、賃料債権という債権があるから破産手続にのせないといけないのではないかと思う人もおられるようですが、家賃を支払わないと生活の場が奪われることになりますので、これを債権者にのせなくても特に問題はないと考えられています。
仮に貸主が借主の破産を知ったとしても、それだけで賃貸借契約を解除することはできません。
破産手続をとった時点で既に家賃を数ヶ月滞納しているケースもあります。この場合は貸主次第でもあるのですが、家賃を少しずつ支払って住み続けることができることもあります。このような場合でも破産手続で債権者にのせないことも実務上は許されています。
さらに、家賃の滞納金額が大きくて、支払うことが難しい場合で、退去してもやむを得ないと考えている場合もあります。このような場合は退去せざるを得なくなりますが、滞納していた家賃を破産手続にのせて、免責によって支払責任をまぬがれることもできます。
住まいを所有している場合は、原則として破産管財人が管理する対象の財産になりますので、売却の目処がつくまでに退去せざるを得なくなります。破産管財人による任意売却ができなかった場合やそもそも破産管財人が選任されなかった場合には債務者本人が任意売却手続をとるか、抵当権者が競売手続をとることになりますので、いずれにしても退去せざるを得なくなります。
住宅を持ち続けて借金問題を解決する方法としては、個人再生という方法があることは前に述べました。

(2)勤務先

破産手続をとったことによって勤務先の会社を退職する必要はありません。
仮に勤務先が従業員の破産を知ったとしてもそれだけで解雇することはできません。

会社から給料をもらっている人が自己破産申立をするときに、裁判所に「源泉徴収票(これにかえて市区町村が発行する課税証明書を提出する方法もありますが)、直近の2ヶ月分の給与明細書、今すぐ退職した場合の退職金計算書の提出は求められます。
このことによって、裁判所が勤務先に破産手続を知らせるのではないかと心配される方もおられるようですが、裁判所が勤務先に従業員が破産したことを知らせることは基本的にありません。
退職金計算書については、会社の就業規則や退職金規程によって退職金の計算ができれば、その計算結果と根拠となる資料を提出すればいいので必ずしも会社の人に作成してもらう必要はない訳です。
中には、破産手続をとったら給料が差押えられるのではないかと心配される方もおられるようですが、破産手続をとったことだけで給料が差押えられることはありません。
債権者が債務名義という文書を裁判所に提出しない限りは給料差押はできません(税金の滞納処分は別にして)。債務名義というものには、たとえば、金銭の支払いを命じる判決、支払を約束した和解調書、支払を約束し、支払をしない場合には差押されることを承諾した公正証書などがあります。このような文書が作られている場合には給料を差し押さえられる危険があります。
自己破産手続が開始した場合や個人再生手続が開始した場合には、債権者は給料などを差し押さえることができなくなりますので、差し押さえられそうだと思ったら早めにそのような手続をとるのも大事だと思います。
仮に給料が差し押さえられたとしても全額ではありません。給料から税金、社会保険料を控除した後の金額の4分の1です(ただしこれが44万円を超えた場合は33万円を超える部分の全額が差押えとなります)。

(3)各種手当て

破産手続をとっても年金受給や生活保護受給には何の影響もありません。

(4)銀行預金

全ての銀行預金の残高の合計が20万円以下であれば破産管財人による処分の対象になりませんので、そのまま使っても問題はありません。
全ての銀行預金の残高の合計が20万円を超えていれば、破産管財人による処分の対象となりますので、破産管財人によって預金解約される可能性があります。ただ実際には現金について99万円以下について自由財産とされていますので、それとの兼ね合いで預金残高合計が99万円以下であれば自由財産拡張をして、破産管財人による処分の対象から外してもらえる可能性も高いので、その時は預金をそのまま使えることになります。

また、新しく銀行預金口座を作ることについても特に問題はありません。

この他に債権者となっている銀行の預金については、以下のことに注意する必要があります。
銀行はお金を貸している相手が破産手続をとっていることが分かった段階で(あるいは任意整理の通知を受け取った段階)で自分の貸金債権を保全するために貸している相手がもっている銀行預金を下ろせないようにします。相殺して貸金の回収をするためです。
ですので、債権者となっている銀行に預金の残高が残っている場合には事前にこの預金をおろしておかないと、銀行の貸金と相殺されてお金が使えなくなってしまいます。
また、この口座が給料や年金などが入金される口座の場合にも問題がおきますので、手続をとる前に、入金口座を債権者となっていない銀行の口座に変更してもらう必要があります。

(5)家族

債務者が自己破産手続をとったからといって、家族に対して支払義務は生じません。
債務について家族の人が連帯保証契約をしている場合には、この連帯保証契約に基づいて請求される可能性はありますが、そうでない限りは支払う必要はありません。

また自己破産手続をとった場合には、信用情報機関に登録されて、新たな借入やクレジットカード作成が難しくなることは前に述べましたが、それはあくまで自己破産手続をとった本人についてのみ生じるものです。この点で家族には影響はありません。

子供の進学や就職に影響があるかもと心配される方もおられると思いますが、そもそも破産手続をとった事実は戸籍謄本には記載されません。
もっとも、戸籍とは別に本籍地の市町村役場で破産者名簿が作成されていて、役場で身分証明書を取り寄せると自己破産手続をとったことが判明することがあります。
しかし、裁判所が破産者の本籍地の市町村役場に破産手続開始決定があったことを通知するのは、破産手続開始決定が出たものの免責不許可決定が確定した場合などに限られています。ほとんどの場合は本籍地役場への通知はされません。ですので仮に破産手続中に本籍地の市区町村役場で身分証明書の取り寄せをしても、破産手続開始決定がされたことは分かりません。ですので、この点についての心配も不要です。

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