住宅資金特別条項

住宅資金特別条項とはどのようなものですか

個人再生を含めた民事再生手続では、債権者は再生計画が裁判所から認可された後に計画に従って支払うのが原則です。
しかし、再生計画に基づく支払をする場合、通常、債務額を大幅にカットした上でカットした総額を更に分割で支払うということになるので、これも住宅ローン債権にそのまま適用すると、ローン債権の未払いが生じることになり、競売で家を失うおそれがあります。
このため、民事再生法では、住宅ローン債権については、再生計画による弁済とは別に支払条項を定めて家を失わないようにする条項を定めることが認められています。この条項は「住宅資金特別条項」と呼ばれています。

この「住宅資金特別条項」を定めた再生計画が裁判所から認可されれば、住宅ローンの支払いを続けて住宅を残しつつ、他の債務について大幅カットした上での分割払いが可能になるので、家を残して債務整理をしたい人にとってこの手続をとるメリットはとても大きくなります。

住宅資金特別条項は住宅ローンであれば必ず利用することができるのでしょうか

住宅ローンがあれば住宅資金特別条項が必ず利用できる訳ではありません。
住宅資金特別条項を利用するためには以下の要件を満たす必要があります。

まず、最初に「住宅資金貸付債権」に関するものであることです。

この「住宅資金貸付債権」であるためには、以下の「住宅」であることが必要となります。

  個人である再生債務者が所有していること
  自己の居住用の建物であること
  床面積の2分の1以上の部分が居住用であること

ただし、これに該当する建物が2つ以上ある場合は主たる居住用の建物についてのみ住宅資金特別条項を定めることが認められます。

また「貸付債権」に該当するためには以下に該当することが必要となります

 住宅の建設若しくは購入に必要な資金又は住宅の改良に必要な資金の貸付に係る分割払いの定めのある債権であり、
 この債権又は債権に係る債務の保証人の主たる債務者に対する求償権を担保するための抵当権が住宅に設定されているものであること

  ただし、上記の要件を満たしても下記の場合には住宅資金特別条項を定めることは認められていません

 住宅に住宅資金貸付債権以外を担保する担保権が設定されている場合
 住宅以外の不動産に住宅資金貸付債権を担保する抵当権が設定されている場合で後順位で住宅資金貸付債権以外を担保する担保権が設定されている場合

これらの場合は特別条項をいくら定めても、他の担保権に基づいて競売されて家を失うことになってしまうため、家を守るための特別条項を定める意味がなくなってしまうからです。

住宅ローン以外の債権を担保する担保権が設定されていた場合や税務署から滞納処分による差押がされていた場合は住宅資金特別条項を利用できないのでしょうか

このような担保権がついたままでは再生計画認可決定をすることができず、不認可になってしまいますが、個人再生申立の段階で担保権抹消の見込みがあれば再生手続開始決定を出してもらうことも可能です。そして認可決定までに抹消できればいいということになります。
また、税務署からの滞納処分による差押がされている場合も、建物が公売されると再生債務者が家を失うことになってしまうため、原則として不認可になってしまいます。しかし、このような場合でも再生計画認可決定をもらえる場合もあります。詳しくは来所相談された際に説明させていただきます。

住宅ローンの支払が遅れて遅延損害金が発生しているのですが、住宅資金特別条項を利用することができますか

順調に支払を続けている場合だけでなく、遅延損害金が発生していても住宅資金特別条項が利用することは可能です。
ただし、遅滞が続いて債権が保証会社に移り、それから6ヶ月経過した後に個人再生を申し立てた場合には住宅資金特別条項を利用することはできません。
競売手続が始まっても同様です。ただし、競売手続が始まった場合はこれを放置すると家を失うことになってしまうので、抵当権実行手続中止命令を出してもらうことによって、競売手続の進行を一時中止してもらうことになります。

住宅資金特別条項を定めた場合の支払内容はどうなりますか

個人再生申立までに住宅ローンの支払いを続けてこられた方は、従来どおりの約定で支払を続けるという内容で定めることができます。
遅延損害金が発生している場合でも住宅資金特別条項を定めることができることは説明しましたが、この場合の住宅資金特別条項の内容は以下のとおりとなります。なお、いずれの方法をとっても元々の約定に基づく元本、利息、遅延損害金の全てを支払うことには変わりはなく、支払義務を一部でもなくすような住宅資金特別条項を定めることは住宅ローンの債権者が同意しない限りは認められません。

 原則としては、遅滞している元本、利息、遅延損害金を再生計画の弁済期間内に全て支払うという内容になります。要するにに再生計画の弁済期間内に遅滞を解消して元の約定どおりの返済に戻ることになるので、これを期限の利益回復型といいます。
 遅滞金額がわずかであれば、問題はないのかもしれませんがこれが多額になると再生計画に基づく支払いもあるため、支払いが非常に厳しくなります。

 上記の方法で支払いが難しい場合は、弁済期間を延長(最長で10年、但し最終弁済期が70歳を超えないことが条件)した上で、その弁済期間内で遅延した部分も含めて元本利息の支払い約定に組み替えるという内容になります。これをリスケジュール型といいます

 上記の方法でも支払いが難しい場合は、上記のリスケジュール型に加えて、再生計画の弁済期間は元本の弁済猶予をし、再生計画の弁済期間中は利息のみを支払うという内容にすることもできます。これを元本猶予期間併用型といいます。

  以上の3つの住宅資金特別条項の内容は、住宅資金貸付債権者の同意がなくても定めることができるものですが、住宅資金貸付債権者の同意があれば、上記の内容を満たさなくても住宅資金特別条項を定めることができます。

住宅資金特別条項が利用できない場合は、住宅を残すことができないのでしょうか

住宅資金特別条項が適用できない場合だと、住宅を残すことができないようにも見えます。
しかし、この場合であっても、担保権者と協議を行い、担保の対象物件の評価額相当額を再生計画と別に分割して支払うことを合意し、これを滞りなく支払を続けている限り担保権実行による競売を行わず、支払を完了した場合には担保権を解除することを合意することによって住宅を維持する方法も考えられます。この合意を「別除権協定」と呼びます。詳しくは来所相談をされた場合に説明させていただきます。

住宅資金特別条項を定める場合は手続はどのように進みますか

住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する予定の場合、住宅資金貸付債権者と事前の協議を行う必要があります。従来の約定通りの支払を続ける場合はあまり問題はないのですが、支払内容を変更する場合は債権者の協力を得ないと変更内容を定めるのは困難と思われます。

そして個人再生申立の際に、住宅資金貸付債権がある旨と住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出予定である旨を記載した債権者一覧表を提出する必要があります。申立時にその旨の記載がないと後で再生計画案を提出する段階で住宅資金特別条項を定めることができなくなります。

再生手続開始決定がされた後は、再生計画認可決定が確定するまでは債権者に対する弁済が禁止されます。これは住宅資金貸付債権についても同様です。ただ再生手続開始決定後に住宅資金貸付債権の支払を止めてしまうと、遅延損害金が発生し、債務者の負担が重くなります。このため、裁判所に一部弁済の許可をもらうことによって、住宅資金貸付債権のみ従来の約定どおりの返済を続けることができます。

これとは逆に、未払いの状態が続いて債権が保証会社に移り、更に競売手続が開始してしまった場合には、再生手続開始決定が出ても当然に抵当権実行による競売を止めることはできません。この場合は再生手続開始決定が出た後に裁判所に抵当権実行手続の中止命令を発令してもらって、競売手続を一時停止してもらう必要があります。

住宅資金特別条項を定めた再生計画案が裁判所に提出された後に、裁判所は住宅資金貸付債権者の意見を聴かなければならないものとされています。あくまで意見を聴くことが要求されているだけであり、同意することまでは必要ではありません。

上記の再生計画案が認可されたら、再生計画案記載内容のとおりに権利義務が変更されます。住宅ローンの支払が遅滞していた場合でも支払の遅滞がなかったのと同様の状態になり(これを「期限の利益の回復」といいます)、そして債権についても保証会社から元の債権者に戻ることになります(これを「巻き戻し」といいます)。

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